
80代の一人暮らしについて調べてみた
No.61 80代 一人暮らし
一人暮らしをせざるを得ないのは、
・子供との同居はお互いにストレスになる
・自立した生活を送れるので自由に暮らしたい
・経済的な心配がなく、生活環境に満足している
・住み慣れた土地を離れたくない
・家族や親族に頼れる人がいない
問題になりやすいこと
・日常生活の問題
・病気や健康面の問題
・いざという時への不安
・孤独死
80歳以上になると増えてくる「日常生活の問題」
・靴下を履くのが大変
・平地で躓く
・階段で手すりが必要
・15分くらい続けて歩くのが辛い
・横断歩道の青信号で渡り切れない
・身体機能の衰えや気力の低下によって、買い物や調理、掃除など、日常生活を送る上での問題
・買い物に行くのが大変に感じる
・買い物に行って重いものを持ち帰れない
・一人で調理をするのが難しい
・一人で掃除をするのが難しい、或いは掃除が行き届かない
・認知症からの近隣トラブル
80歳以上になると増えてくる「病気や健康面の問題」
・立ち座りの動作や歩行が困難になる
・転倒によるケガ、骨折等により寝たきり状態
・服薬管理が難しい
・認知症の発症・進行
・買い物に行けなかったり、調理をするのがままならなかったりすると、栄養バランスが偏った食生活となり、低栄養の状態に陥る
年齢が進むと、出来なくなる事が増えていく
高齢になると、それまで普通に出来ていた事が、出来なくなる事があります。
公益財団法人 生命保険文化センターが高齢者の「日常生活の支障」について調査した内容を紹介します。
※80歳以上のデータに絞っています。
●「バスや電車を使って一人で外出出来ない」
年齢が進むにつれてどんどん増えていく支障です。
「バスや電車を使って一人で外出出来ない」人は、80代前半では16%しかいません。
しかし、80代後半では30%を超え、90歳以上では60%に達します。
5歳ごとに、倍々で増えていくのです。
一人で交通機関を利用して出歩けるのは、80代までと思った方が良いでしょう。
80~84歳16.9% | 85~89歳 30.3% | 90歳以上60.9% |
●「預貯金の出し入れが出来ない」
「預貯金の出し入れが出来ない」は、
80代後半になっても80%以上の人は、窓口やATMなどでお金を引き出すことが出来ます。
しかし、90歳以上になると、半分以上の人は、預金の操作が出来なくなります。
「預貯金の出し入れが出来ない」は、80代と90代の差が大きいのです。
80~84歳10.3% | 85~89歳 18.2% | 90歳以上56.5% |
●「日用品の買い物が出来ない」
「日用品の買い物が出来ない」も、80代後半までは20%もいません。
「預貯金の出し入れが出来ない」とだいたい同じぐらいの割合なので、80代後半までは、自分でお金を引き出して、買い物をが出来る人が多いと思って良いでしょう。
しかし、90代になると、半分以上の人は買い物が出来なくなります。
自分で買い物が出来なくなると、一人暮らしで自立した生活を送ることが難しくなります。
80~84歳9.9% | 85~89歳 17.4% | 90歳以上54.3% |
●「本や雑誌を読んでいない」
「本や雑誌を読んでいない」は、80代でも20%以上います。
これには、もともと読書の習慣を持たない人も、ある程度含まれているでしょう。
そして、90代になると、ほぼ半分の人が本や雑誌を読んでいません。
これは、老眼などで字が読みにくくなるのに加え、集中力が続かなくなることも影響して
いるでしょう。
「読書」を老後の楽しみにしたいと思っている人は、読みたい本は先延ばしせずに、出来るだけ早く読むことをお勧めします。
80~84歳25.6% | 85~89歳 27.3% | 90歳以上47.8% |
●「お湯が沸かせない」
「お湯が沸かせない」は、80代と90代の差が大きい項目です。
80代では「お湯が沸かせない」は10%もいません。
しかし、90代になると30%以上が、「お湯が沸かせない」と自覚しています。
火を使うことが怖くなるのに加え、ガスレンジ等の器具の操作が難しくなるせいでしょう。
80~84歳3.3% | 85~89歳 6.8% | 90歳以上30.4% |
●「一人で薬を服用出来ない」
「一人で薬を服用出来ない」も、80代では数%しかいません。
しかし、90歳以上になると、いきなり20%以上に増えます。
たぶん、90歳以上になると、物を飲み込む嚥下(えんげ)機能に支障が出る人が多いのでしょう。
嚥下機能の衰えは誤飲性肺炎などの病気の原因でもあります。
90歳以上になったら、「食べる」「飲む」などの基本的な動作にも注意が必要になることが分かります。
80~84歳2.1% | 85~89歳 2.3% | 90歳以上21.7% |
●「一人で電話をかけられない」
90歳以上になると出やすい支障を紹介します。
それは「一人で電話をかけられない」です。
これは、携帯を含む電話機という機械の操作が出来なくなる事と、声だけ聞こえる相手を想像しながら会話をするという複雑な行動が出来なくなる事が原因でしょう。
80~84歳3.7% | 85~89歳 3.8% | 90歳以上28.3% |
●何かが出来なくなっても、日常生活が出来なくなるわけではない
高齢による日常生活の支障があるかどうかは、個人による差がとても大です。
ただ、確実なのは、いつかは出来なくなる可能性は誰にでもあるということです。
また、日常生活で出来ない事が増えていっても、周囲の人の助けを借りたり、介護保険を利用することで、日常生活を続けることが出来ます。
「何かが出来ない」ということがわかっても、もうダメだと悲観するのではなく、それを補う方法を考えましょう。
また、「~が出来なくなった」と嘆くよりも、「まだ~が出来る」と出来る事がある事を喜ぶような姿勢が、日常生活を明るくする大事な秘訣です。
一人暮らしの高齢者本人が出来る対策
・すぐに体調の変化に気づけるよう、自治体の実施する健康診断を受診し、日頃から自分の健康状態を把握しておく
・体調がすぐれずに買い物に行けない時や災害発生時に備えて、食料品や日用品をストックしておく
・災害発生時に備えて、避難場所の確認も忘れず
・自治会や町内会に加入することで地域との接点を持つ。
自治会によっては、災害発生時に安否確認を行い、救助を行ったり応援を要請したりしているため、災害時の観点からも、自治会への参加しておくと安心です。
一人暮らしの高齢者のために家族が出来る事(対策)
・本人の状況をきちんと把握する
たとえば、冷蔵庫を見れば、買い物に行くことが出来ているのか。消費期限切れの食品は無いか等をチェック。また、薬の袋やおくすり手帳などを確認する事で、診療を受けている医療機関や飲んでいる薬を把握。薬を指示通りに服用しているかといった事を確認
さらに、見慣れないものが増えている場合は、高齢者を狙った悪徳商法の被害にあってないか、購入場所を聞いてみる。
近所に親しくしている人がいる場合には、日頃の様子を尋ねてみる事もお勧めです。
・差し迫った問題の対応
たとえば、ガスコンロの消し忘れが頻繁にある場合、立ち消え安全装置のついたガスコンロやIHクッキングヒーターにする等の解決策として考えられます。
また、金銭管理に不安がある場合は、社会福祉協議会に相談すると、日常的なお金の出し入れや通帳の預かりなどのサポートを受けられます。
・本人の意見を聞く
本人の意見に耳を傾けることも大切。
「お母さん(お父さん)はどうしたいの?」と尋ね、本人の意志を尊重する姿勢を見せると、サポートを受け入れてもらいやすくなります。
一人暮らしの高齢者をサポートする支援サービスの利用
・見守りサービス・安否確認サービス
「訪問型」
高齢者の自宅をスタッフが定期的に訪問し、状況を記録して家族に伝えるサービス
「センサー型」
センサーが高齢者の動きを一定時間検知しない場合に、家族のスマートフォンなどに通知するサービス
「カメラ型」
高齢者の自宅にネットワークカメラを設置して様子を確認したり、呼びかけに応答したりするサービス
「通報型」
緊急時に通報ボタンを押すとスタッフが駆けるサービス
・サービス付き高齢者向け住宅
高齢者向けの賃貸住宅で、安否確認と生活相談のサービスの提供が義務付けられた、バリアフリー仕様の賃貸住宅
日中は介護や医療の有資格者の生活相談員が常駐
なかには、食事の提供や通院の付き添いなどのサービスがオプションで提供されている物件も有り。
外出や外泊が自由にできるところが多く、家族や友人も自由に訪問できるなど、生活の自由度が高いのが特徴で、自立した生活を送ることが可能な高齢者で、一人暮らしには不安がある人に向いています。
・介護保険制度での介護サービス
要介護認定を受けることで介護保険による介護サービスの利用が可能です。
介護保険による介護サービスを利用するには、要介護認定を申請し、要支援1~2または要介護1~5の判定を受けることが必要
居宅介護支援事業所でケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、身体の状態に応じた必要なサービスを利用出来ます。
介護度が重い場合、介護サービスを利用しても一人暮らしは難しいため、軽度の介護が必要な高齢者に向いています。
自宅で生活しながら利用出来るもの
◦訪問サービス
訪問介護員が自宅を訪問して身体介護や生活援助を行う「訪問介護」、「訪問看護」や「訪問リハビリテーション」
◦通所サービス
「通所介護(デイサービス)」……デイサービスセンターで食事や入浴、レクリエーションなどを行うや、
「通所リハビリテーション(デイケア)」……ハビリを受ける
◦短期入所サービス
「短期入所生活介護(ショートステイ)」……施設への宿泊で介護サービスが提供される
・各自治体による支援サービス
自治体によっては、一人暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯に向けた支援サービスを行っています。
たとえば、ボタンを押すと緊急通報される機器の貸し出しや公衆浴場で利用出来る入浴券の支給、家具転倒防止器具の取り付け、火災安全システムの給付などが挙げられます。
自立した高齢者や軽度の介護が必要な高齢者が、安心して自宅で暮らしたい場合に適しています。
・民間の生活支援サービス
宅配弁当サービス等
まとめ
高齢者の一人暮らしには、日常生活や病気・健康面の問題が起こる可能性がある他、いざという時の不安を抱えたり、孤独死を招いたりする恐れもあります。
家族が本人の状況や意見を把握・尊重する事が大切である一方、家族だけでのサポートが容易ではないことも事実です。
高齢の家族が安心して一人暮らしを送れるよう、介護保険によるサービスや自治体のサービス、民間の生活支援サービスなどを上手に活用しましょう。
脱水症状のサインから予防法
ご高齢の方々は、食事や水分の摂取量が少なくなりがちです。そのため、気温があがり汗をかくことが増える季は、脱水症状や熱中症を引き起こし、死亡に至るケースも増えています。
高齢者の脱水症状とは
高齢者の脱水症状の状態と危険性
脱水症状とは
脱水とは、体内の水分量が足りなくなっている状態のことです。人体の約5~6割が、水やナトリウムを含む体液です。体液が少なくなると喉が渇いて水を飲みますが、何らかの原因で体液が大量に体外に排出され、体の働きを正常に保てなくなってしまった状態を脱水症状といいます。
ご高齢の方の脱水症状は、本人が気づかないうちに進行していきます。そのため、脱水を自覚した時には、すでに「自分では対処できない状態」「入院が必要な状態」になっていることもあります。一人暮らしの方の場合は助けを呼べないなどの危険もあります。
脱水症状の危険性
体の半分以上をしめる体液には、酸素や栄養素を体中の必要な場所へ届けるという働きがあります。脱水症状を引き起こしていると、この機能が低下し、内臓や脳などを正常に働かせることが出来なくなります。これが原因で、思わぬ病気を引き起こしてしまったり、命が危険にさらされたりする危険性があります。脱水症状には、早めに気づくことが大切です。
高齢者の脱水・熱中症の増加
脱水症状に気づかず放置していると、熱中症のさまざまな症状を引き起こします。熱中症とは、夏など気温が高い環境に長時間いることで生じる健康障害のことです。熱中症で命を落とすご高齢の方が年々増えており、厚生労働省の統計によると、2017年に熱中症で亡くなった方の約8割をご高齢の方がしめていることがわかっています。
ご高齢の方の場合、暑いと思ってもエアコンを使用しなかったり、加齢によって暑さを感じにくくなっていたりするため、脱水に気づくころには状態が悪化していると考えられます。
高齢者の脱水症状の原因
ご高齢の方は、なぜ脱水症状を引き起こしやすいのでしょうか。ご高齢の方の脱水症状の原因
水分摂取量の減少
ご高齢の方は、加齢によって喉の渇きを感じにくくなったり、「食べられる食事の量が減った」などの理由から食事による水分摂取量も少なくなるため、若い方に比べ水分摂取量が少ない傾向にあります。
また、筋力の衰えなどから動くのが億劫になってしまい、トイレの回数を減らすために水分摂取量を意図的に減らしている場合もあり、脱水症状を引き起こしやすくなります。
水分喪失量の増加
水分摂取量が少ないにもかかわらず、体から排出される水分量が増える事で脱水症状を引き起こします。水分消失量を増やす原因には、下痢や嘔吐、排泄障害や糖尿病、降圧薬による頻尿などがあります。
また、ご高齢の方は、加齢による筋力低下が原因で、基礎代謝が落ちていきます。その為、代謝で生成される水分量が減り、筋肉や皮下組織での備蓄水分量が減少する傾向があります。これらも、ご高齢の方が脱水症状を引き起こしやすい原因です。
高齢者の脱水症状のサイン
ご高齢の方の脱水症状サインを知っていれば、高齢のご家族に脱水症状がみられた際に早めに対処出来ます。
●顔や体に現れる脱水症状のサイン
・唇や口の中が乾燥している
・皮膚やわきの下が乾いている
・手の甲の皮膚をつまんだ後、すぐに戻らない
・爪を押してすぐに色が戻らない
・体重が減少している
・嘔吐や下痢が見られる
・血圧の低下や頻脈が見られる
唇や口の中が乾燥している場合は、喉が渇いていない場合でも水分を補給するように促し、脱水症状の進行を止めましょう。体重の減少が見られた場合は、中度の脱水症状まで進行していると考えられますので注意してください。
●本人の様子でわかる脱水症状のサイン
・トイレの回数が極端に少ない
・食欲がない
・頭痛や吐き気を訴えている
・立ちくらみする
・なんとなく元気がない
・疲れている様子がみられる
・話しかけても反応がない
頭痛や吐き気を訴えている場合は、中度の脱水症状を引き起こしていると考えられます。そのまま脱水症状が進行すると、意識を失う、痙攣が起ることもありますので、早めに対処しましょう。
脱水症状の改善・治療法
●意識があり口からの水分補給が可能な場合
経口補水液やスポーツドリンクなど、適度なナトリウムが含まれた水分を、口から少しずつ摂取するようにします。同時に、室内の温度や湿度を調整しましょう。
●血圧低下や意識障害があるとき
口から水分を補給できないほどに衰弱している場合は、病院で点滴をしてもらい、電解質と水分を補給します。血圧低下、意識障害などがみられる場合は、入院による治療が必要な場合もありますので注意しましょう。
高齢者の脱水症状の予防法
効果的な水分補給
一般成人が1日に必要な水分量は2.5リットルといわれていますが、体重によって異なります。必要な水分量は、「体重×40ミリリットル」で算出してください。それから、1日に必要な水分を一度に飲むのではなく、こまめな水分補給を心がけましょう。特に、起床時や食事の前、入浴や運動の後、飲酒した後などは水分補給が必要です。
こまめな水分補給ができない場合は、水分を摂取する時間を決めると飲み忘れが減ります。また、水やお茶に限らず、経口補水液やゼリーなどから水分補給をしても問題ありません。
室内環境を整える
暑い夏は汗をかき、寒い時期は乾燥によって体内の水分が失われます。温度や湿度など、室内環境を調整して、水分が逃げないようにしてください。寝ている間も汗をかいて脱水症状を引き起こす可能性があります。エアコンや加湿器を上手に利用して適度な湿度を保つようにしましょう。
さまざまな理由から脱水症状を引き起こしやすくなっていますので、食事やお茶などでこまめに水分摂取を心がけましょう。